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中小企業診断士&ファイナンシャルプランナーのさきがけ読書録

このブログは、中小企業診断士&ファイナンシャルプランナーの就職20年目の仕事人(ビジネスマン)の読書録等です。現在、中小企業診断士、東海地域の某大学院(MBA)、行政書士(試験合格のみ)、AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビジネス実務法務2級、ビジネスマネジャー、初級システムアドミニストレータなどの資格を取得しています。

アキラとあきら(池井戸潤経済小説)

先日、池井戸潤『アキラとあきら』徳間文庫、2017を読みました。

本書は、倒産した零細町工場の息子である山崎瑛(やまざきあきら)と大手海運会社の息子である階堂彬(かいどうあきら)の二人の小学生時代から就職、バブル経済とその崩壊、そして後処理までの30年間を描いた経済小説です。

二人は、全く異なる境遇をたどるものの、産業中央銀行に同期入行します。

その新人研修で、融資部長が次のような挨拶をします。
「儲かるとなればなりふり構わず貸すのが金貸しなら、相手を見て生きた金を貸すのがバンカーだ。金は人のために貸せ。金のために金を貸したとき、バンカーはタダの金貸しになる。」

この思いを胸に二人はバンカーとして成長するものの、階堂彬は大手海運会社の息子であるという立場から人生の軌道修正が図られ、そして、二人はそれぞれの立場で、また交差することになります。

経済、経営、銀行員とは、経営者とは、家族とは、兄弟とは、など様々な視点から本書は読むことができると思います。
文庫本で700頁以上ある大作ですが、小説の世界に入り込み、非常に読みやすい経済小説でした。


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団塊の後(堺屋太一氏小説)

作家・経済評論家の堺屋太一氏が、2019年(平成31年)2月8日、多臓器不全のためお亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りいたします。

堺屋太一『団塊の後』毎日新聞社、2017をご紹介します。

本小説の舞台である2026年の日本は、
・人口の減少と高齢化
・「欲ない、夢ない、やる気ない」の低欲社会
・東京オリンピック・パラリンピック以来の経済不況
・1500兆円近くにおよぶ国債残高
・男女とも結婚をしたがらず、子を産みたがらない
状況に置かれています。

そのような状況を踏まえて、時の政府は、「身の丈の国」を目指しています。
・人々の誕生から終末までのすべてを保障する生涯安心政策の確立
・少子高齢化に伴う人手不足に対応する流通無言化の徹底
・人口が増加する首都圏の定数を増やした衆議院の定数600人化

そして、このような「安全で安心で清潔で正確な天国を創ってしまった日本」は、進むべき道を失い、戸惑っています。

そのため、「三度目の日本」に向けて「衆議院の定数」「地方制度」「税財政」の三面を同時に改革する「三面改革」を提示します。
・衆議院の定数を600人に増やし、人口が増加するであろう首都圏を中心に重点的に配分する
・消費税、燃料税、酒・タバコ税の3つを地方自治体の財源とする
・融県生州により都道府県を二都二道八州に再編成する
 都道府県を廃止する廃県置州ではなく、県が融けてやがて州が生まれる融県生州
・国有財産を時価で都道州に売却、都道州は都道州債を発行して購入
・多種多彩な製品を、短時間で安価に提供する第四次産業革命に対応する多様性と変化可能な柔軟性を持つためにも二都二道八州がそれぞれ独自の発想と手法で理想を追求できる体制と実力を与える


堺屋太一『平成三十年 上・下』朝日新聞社、2002で描かれた平成30年(2018年)の「何もしなかった日本」。
国際競争力の低下で円安と国際収支の赤字化が進み、不況と物価の上昇とが同居するスタグフレーションに陥っています。
そして、少子高齢化、地方の過疎化、中国などのアジアの工業化に直面した日本は、「遅進国」になってしまっています。

本書『団塊の後』では、「何もしなかった日本」がさらに継続している設定と思われます。

『平成三十年』を読んだときほどの衝撃はなく、現状から想定できる延長のような印象もありましたが、時代の流れや方向性を考えるための1つの視点として面白いと思いました。
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オペレーションZ(真山仁氏小説)

先日、真山仁『オペレーションZ』新潮社、2017を読みました。

本書は、日本の財政破綻を回避するため、内閣総理大臣である江島隆盛が、一般会計予算の歳出を半分にするという改革案を掲げて、その実現に奔走する小説です。

この改革案がどうなるかは本書をお読みいただければと思います。
小説の中で議論される改革案の賛否は、非常に興味のある内容となっています。


日本の実際の平成30年度の一般会計予算は、約98兆円です。
歳出の23.8%(23兆円)は国債費(国債の債務償還費と利払費)であり、過去の借金返済費のため削減は難しい費用です。
その他の大きな歳出は、年金や介護・医療などの社会保障関係費33.7%(33兆円)、地方の財政力の差の調整や財源の保障のための地方交付税交付金等15.9%(15.5兆円)となっており、国債費、社会保障関係費、地方交付税交付金等で歳出の7割以上が占められています。
よく無駄が多いと批判される公共事業費は6.1%(5.9兆円)、防衛費は5.3%(5.1兆円)であり、歳出全体に占める割合は大きくありません。
一方、歳入については、税収でまかなわれているのは約6割(59.1兆円)で、34.5%(33.7兆円)は公債金(将来世代の負担となる借金)となっています。
この歳入と歳出のバランスの悪さと公債金による穴埋めによって、公債残高は、平成30年度末で約883兆円(税収の15年分)となっています。
また、歳出の増加の原因は、社会保障関係費の増加が大きいと言えます。

このような歳入と歳出のバランスの悪さと公債金による穴埋めがこのまま継続できるのか、継続した結果、いずれ財政破綻に至るのであれば、小説の中で提示される一般会計予算の歳出を半分にするという改革案を現実的ではないと一笑に付すことができるだろうかと考えてしまいます。

■財務省HP(日本の財政を考える)
https://www.mof.go.jp/zaisei/matome/index.html

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下町ロケット2ガウディ計画

先日、池井戸潤『下町ロケット2ガウディ計画』小学館、2015を読みました。

本書は、『下町ロケット』の続編で、TBSドラマにもなりました。

前作の『下町ロケット』では、主人公の佃航平は実家の中小企業である佃製作所を継いで、研究開発・技術開発を進めていたが、特許侵害訴訟や大型ロケットの製造開発を進める大企業である帝国重工との取引交渉などの困難に直面するという話でした。

『下町ロケット2』では、佃製作所が北陸医科大学の一村教授、福井市にある編み物会社である桜田経編の子会社であるサクラダと一緒に心臓の人工弁を開発する話です。

前作同様に、本書の中の次の台詞が印象に残っています。

「いろいろな壁が世の中にはある。楽にうまくいく仕事なんてないさ。だからといって、逃げたら何ひとつ、残らない。実績も評価もだ。」

「若い頃はともかく、だんだんと出世していって権力を持ち始めると、その魔力に取り憑かれてしまうのかも知れません」
「出世が、結果ではなく目的になってしまった人間ってのは、本来、何が大切なのかわからなくなってしまう。人命より、目の前の出世を優先するようになるんです」

「仕事に夢がなくなってしまったら、ただの金儲けです。それじゃあつまらない。」


しかし、悪者役として登場する人物の発言も一理あるという台詞が出てきます。

アジア医科大学の心臓血管外科部長である貴船教授の次の台詞です。
「医療というのはどこまでいっても、失敗による経験の蓄積、仮説と実証の繰り返しなんだ。失敗を責めたら、医療は進化しない。大病院がけしからんと、ジャーナリストが正義を振りかざしているつもりかは知らんが、それで医療が進歩するか?」


大企業と中小企業の関係、医療機器開発の課題、社員の転職と知的財産・ノウハウの移転の問題など前作同様に、研究開発型中小企業の現状と課題、そして今後の方向性を考えることもできる経済小説だと思いました。

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空飛ぶタイヤ(池井戸潤氏経済小説)

先日、池井戸潤『空飛ぶタイヤ』実業之日本社、2006を読みました。

本書は、赤松運送のトレーラーの走行中に外れたタイヤが死亡事故を起こしたことから始まります。

トレーラーは、大手自動車会社のホープ自動車が製造したもので、事故原因は、赤松運送の整備不良とされるものの、本当はホープ自動車の欠陥(リコール)隠しなのではないかとの疑いが出てきます。

中小企業の赤松運送と大手自動車会社のホープ自動車との交渉
中小企業の経営者と大企業組織のサラリーマンの視点の違い
ホープ自動車という大企業の組織内部での争い
ホープ自動車とグループ会社のホープ重工、東京ホープ銀行、それぞれの思惑
など、一つの事故をめぐる様々な視点が描かれている作品です。

自分がそれぞれの立場であったならば、どういった対応をとるだろうか、理想と現実を踏まえて、考えることができる経済小説だと思いました。

本書は、フィクションであり、実在の個人・団体・事件とはいっさい関係はないとされていますが、題材にした事件は読むとすぐにわかります。

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