中小企業診断士&ファイナンシャルプランナーのさきがけ読書録

このブログは、中小企業診断士&ファイナンシャルプランナーの就職19年目の仕事人(ビジネスマン)の読書録等です。現在、中小企業診断士、東海地域の某大学院(MBA)、行政書士(試験合格のみ)、AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビジネス実務法務2級、ビジネスマネジャー、初級システムアドミニストレータなどの資格を取得しています。

どうする?日本企業(三品和広氏)

先日、三品和広『どうする?日本企業』東洋経済新報社、2011を読みました。

著者は、企業現場とデータ分析によって、これまで『戦略不全の論理』『戦略不全の因果』の2冊の経営学書にまとめておられる経営学者です。

そして、本書は、上記の経営学書にまとめられた仮説を実務家向けに提示するために書かれたものです。

本書は、
『日本企業は管理職の延長線上に経営職を置いてしまったため、管理一辺倒に陥り、寿命を迎えた事業の立地にしがみついたまま、利益が伴わない不毛な努力を続けている。』
という前提に立っています。

1970年代に創業経営者や大物経営者が引退すると、日本企業は「集団経営」に移行します。
指揮官を失っても会社はすぐに潰れないものの、主力事業の寿命が尽きつつある企業にとっては、ブルーカラーのホワイトカラー化、遅い昇進、定期異動、全社的品質管理、改善活動、方針管理、事業計画、稟議を始めとした、実行部隊の技能形成を促し、現場で判断を下せることだけでは対応できないというわけです。

また、自社のやりたいことが先にあり、それに邁進した結果として企業が成長を遂げるのであればよいが、成長目標が先に立っていて、手段は後で社員に考えさせるという状況、また、決めたことを実行するために全社員を巻き込んでいく結果としての集団経営ならよいが、やることを合議で決める手段としての集団経営では違和感があるというわけです。

本書では、上記のような基本的な考え方を背景として、「どうする?」と聞かれた際に、模範解答といえる、「イノベーション」「品質」「多角化」「国際化」について、それぞれの具体的な事例を通じて、一歩立ち止まって、考え直してみることを提示しています。


私もMBAの取得や中小企業診断士資格の取得を目指して勉強を始めた頃は、経営戦略とは決まった型のようなものがあり、それに従って実行していくという印象を持っていました。

しかし、少し考えると当たり前なのですが、経営戦略に決まった型があるのであれば、誰が考えても同じ結論に至るということであるため、すべての企業が同じ戦略を選び、そして、その結果、企業間の差別化ができず、長期利益の獲得ができないという構図になってしまうわけです。

つまり、経営戦略に決まった型があるのではなく、自社がやりたい内容を実行するために、様々な型を経営者が状況に応じて選択していくことが経営なのではないかということです。

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メイカーズ進化論

先日、
小笠原治『メイカーズ進化論』NHK出版新書、2015
を読みました。

本書では、モノづくりを取り巻く、モジュール化、3Dプリンター、インダストリー4.0などについて、「売れる」「作れる」「モノゴトで稼ぐ」の3つの視点で分析しています。

「売れる」については、
アイデアを持つ人が、インターネットのサイトを通じて広く呼びかけることで、それに共感した人から資金を集める「クラウドファンディング」によって、製品の発売前から市場が予測できること。これにより、リソースの少ないベンチャー企業でも、試作品段階からのPRの重要性を理解し、世間の注目を集め、メディアに積極的に取り上げてもらう手法を使うことで、「モノが売れる」仕組みをつくることができることなどについて説明しています。

3Dプリンターの登場によって、「作れる」ことが注目されるものの、3Dプリンターやクラウドファインディングによって、ベンチャー企業でも「モノが売れる」仕組みができつつあることが、ものづくりの新たな展開につながるのではないかという主張です。


「作れる」については、
3Dプリンターに代表される「アディティブ・マニュファクチャリング(Addtive Manufacturing:積層造形、付加製造)」について説明しています。
「アディティブ・マニュファクチャリング(Addtive Manufacturing:積層造形、付加製造)」とは、樹脂などの薄い層を積み上げて立体物を製作する技術で、素材を「重ねる」技術です。
「切る」「削る」技術では時間がかかりすぎる作業を、素材を「重ねる」ことにより、従来は金型を成型しなければならなかった部品の製造に使うことで、工期を短縮し、コストダウンを図ることができるようになってきていることを説明しています。

また、マニュアル化されていない経験値や暗黙知の共有を促すメイカーズが集まる場ができつつあることについて、場の存在する意義や製品開発のスピードを上げることにつながることを説明しています。
具体的には、各国の製品規格、各種試験をクリアするためのノウハウをプラットフォームとして提供し、シェアしていくことによる製品開発のスピードアップ化を例示しています。


「モノゴトで稼ぐ」については、
「ドリルを買おうとしている人は、ドリルが欲しいのではなく穴を開けたいのだ」の格言のように、ユーザーが欲しいのは、モノではなく、モノゴトであることを説明しています。
モノづくりは、モノを売るのではなく、コトを売るサービス業になる可能性すらある。
IoTの普及によりセンシングの精度があがり、モノゴトで稼ぐ可能性が表面化してくることを説明しています。

さらに、「モノづくりの世代交代」や「工場のIoT化」についても説明しています。

モノづくりの世代交代
第一世代:従来のものづくり企業。自社で研究開発から企画、製造、販売、アフターサービスまですべてを一気通貫して行う。
第二世代:モジュール化された部品を組み合わせて、新たな付加価値を生み出す。
第三世代:IoTを担う、「モノのインターネット」ではなく、「モノとコトのインターネット」、「モノゴトで稼ぐ」モノづくり。

工場のIoT化
第一段階:製造機器同士、モジュール同士をつなげるための標準化
第二段階:製造装置を制御するコントローラーの標準化
第三段階:製造ライン、工場と工場の間をつなぐ情報の標準化
第四段階:原価や生産性などの経営に必要な情報の標準化
工場が自動的に効率化して生産工程が動くことが、スマート工場化(工場のIoT化)であり、さらに、自動化とインターネットへの接続にとどまらず、メーカーが顧客にサービスを提供する「モノゴト化」も考えられるのではないかと説明しています。


本書では、抽象論になりがちな「クラウドファンディング」「3Dプリンター」「モノづくりからコトづくり」などの新たなモノづくりの動きについて、具体的な事例を交えて説明されています。
具体的な動きが顕在化した時には、既存のモノづくり企業にとっては手遅れになっている可能性もあるため、自社で取り組むべきこと、取り込むべきこと、提携すべきことなどを意識して、本書を読まれることをお勧めします。

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ものづくりの反撃

先日、
中沢孝夫、藤本隆宏、新宅純二郎『ものづくりの反撃』ちくま新書、2016
を読みました。

1980年代のASEAN、冷戦終結後の中国などを中心とした低賃金労働力の登場により、日本のものづくりの海外移転や空洞化が叫ばれました。
そして、現在、インダストリー4.0、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)など、ものづくりの新たな転換点であるという主張がされています。

しかし、筆者たちは、そういった流行に対して、ものづくりの現場を踏まえた反論を本書で展開しています。

同じ産業のなかにも強い企業と弱い企業はあり、製造業のなかにも強い部分と弱い部分があることを前提として、それぞれの企業を個別に見て、それを積み重ねて全体状況を読み取るべきである。
中小企業の場合も、かわいそうな中小企業はたしかに存在するものの、中小企業全体がかわいそうなわけではないというわけです。

ASEANや中国などの低賃金労働力の登場についても、製造業の場合、全体のコストの3割程度が人件費であり、その3割における人件費の差(例えば、20対1)が、生産性の差によって埋められて、コスト全体で見れば、ほとんど差がない状況になってきている。
したがって、日本のものづくりは空洞化しないし、円安によって国内回帰するという単純な話ではないというわけです。

そして、その生産性の向上を考える場合は、先端設備の開発・導入する「生産技術」と現状の設備を使いこなし改善していく「製造技術」を分けて考え、両者が必要であることも主張されています。

私が企業の方とお話をする中でも、競争力のある企業では、単純に設備を購入するのではなく、設備メーカーに意見を出して自社の製造にあった設備をつくる、購入した設備を使いこなすためにカイゼン活動を継続しているという話を多く聞きます。

また、他と異なっているという差別化された個別性が工場の強さなのであって、他社との標準化・共通化は、規格や品質・機能といった結果であり、結果をもたらすプロセスまで同じであったら、競争力を弱める。
製品の標準化のために外部に情報を公開する一方で、製造方法は内部に隠す独自ノウハウにするという戦略が必要という主張も同感です。

今後の日本に必要なことは、現状の人件費の差だけを見たものづくりの海外移転を防ぐことや円安によって国内回帰を促進するという話ではなく、これまでに以上に、国内現場の生産性向上、実力に応じた海外生産進出、そして、新市場の開拓や新商品の開発も同時に進めることであるという筆者たちの意見に私も賛同します。

「インダストリー4.0」についても、日本の生産現場では、長年地道にFA(ファクトリーオートメーション)の改善と進化を続けており、その延長線上の話であり、慌てて対応するのではなく、カイゼン活動にどのようにITを活かすのかという視点で考えていくべきではないかと考えました。
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CSV経営とは

こ数年、経営学の議論で、「CSV(Creating Shared Value)=共通価値(共有価値)の創造」が注目されています。

「CSV」とは、「Creating Shared Value」の略で、「共通価値(共有価値)の創造」と訳されます。

「CSV」とは、営利企業がその本業を通じて社会的問題解決(社会価値)と経済的利益(企業価値)をともに追求し、かつ両者の間に相乗効果を生み出そうという考え方です。

企業の競争戦略を専門とする米国経営学者マイケル・ポーター教授の提唱した「CSV」では、共通価値の概念について、「企業が事業を営む地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら、自らの競争力を高める方針とその実行」と定義しています。

従来、「企業価値と社会価値はある程度相反するものだ」という考え方が主流でした。
企業が利益を追求するためには、多少の社会問題や環境問題を引き起こすのは仕方ないという考え方です。
しかし、近年、いくつかの企業では、「社会問題や環境問題の解決は、利益を生み出す機会である。企業価値と社会価値は両立する。」という考え方のもと、「CSV」の経営フレームワークを活用しているというわけです。

この「CSV」の考え方について、マイケル・ポーター教授は、
「製品と市場を見直す」
「バリューチェーンの生産性を再定義する」
「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」
という三つのアプローチがあるとしています。

(1)「製品と市場を見直す」
  <社会・環境問題を解決する製品・サービスの提供>

このアプローチは、社会的な課題を解決する新しい商品やサービスを生み出すことにより、社会価値と企業価値の両立を図ろうとするものである。
また、このアプローチでは、社会価値と企業価値の両立を実現する必要があるため、純粋に新しい商品・サービスを生み出し社会的な課題に対応するだけでなく、新しい市場を開拓したり、市場を拡大したりすることによって、企業は自らの企業価値を創造する必要がある。

(2)「バリューチェーンの生産性を再定義する」
  <バリューチェーンの競争力強化と社会への貢献の両立>

このアプローチは、自社のバリューチェーンを見直すことにより、社会価値と企業価値の両立を図ろうとするものである。企業のバリューチェーンは、社会に影響を与えているため、この部分を見直すことにより、社会的な課題を解決すると同時に、コスト削減などの企業価値の創造が実現されるとしている。
具体的な見直し項目として、「エネルギーの利用とロジスティックス」、「資源の有効活用」、「調達」、「流通」、「従業員の生産性」、「ロケーション」等を挙げている。

(3)「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」
  <事業展開地域の競争基盤・クラスターの強化と地域への貢献の両立>

このアプローチは、自社が企業価値を高めるため、企業の生産性やイノベーションに影響を与えるクラスターを形成することで、社会的な課題の解決を図ろうとするアプローチである。労働者が搾取されたり、サプライヤーに適正価格が支払われなかったりすると生産性が悪化するため、クラスターの形成には公平かつオープンな市場が必要であるとしている。


また、企業が経営戦略として「CSV」に取り組む意義としては、次の三つが考えられます。

(1)将来を見通した持続可能な戦略を構築できる
  短期思考ではなく、人口動態、気候変動などの社会のメガトレンドに適応する長期的に持続可能な戦略構築が可能となる。
(2)イノベーションの創出
  CSVという新しいフレームを通じて、製品・サービス、バリューチェーン、社会との関わりを見直すことにより、新たな価値、イノベーションの創出が促進される。
(3)グローバル化への対応
  新興国、途上国での事業展開を考えると、「地域とともに発展する」という視点が重要となる。


「CSV」の考え方は、日本の企業戦略と親和性が高いと考えています。

古くは、近江商人の心得をあらわした「三方良し(さんぽうよし)」の考え方と同様と思います。
「売り手良し」、「買い手良し」、「世間良し」の三つの「良し」で、売り手と買い手がともに満足し、さらに、社会貢献もできるのがよい商売であるという考え方です。

また、経済成長の中で発生した公害問題や石油ショックへの対応を通じて技術開発が進み、新興国、途上国での環境ビジネスに応用している事例もあります。


成長のない社会での再分配には限界があると考えます。
中長期的に成長してきた日本企業の経営を改めて見ると、影響力のある社会価値を継続的に生み出すために経済的利益にこだわり、両者の相乗効果を追い求める経営が重要であり、そのような企業を支援していくことが必要なのではないかと考えます。

ただし、社会価値は、何が社会価値なのかの定義が企業で異なり、また、計量化することが難しく、因果関係を明確化することも難しいため、支援すべき企業の抽出、支援した企業の成果の測定が課題と言えます。


【参考文献】
マイケル・ポーター、マーク・クラマー「共通価値の戦略」『DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー2011年6月号』ダイヤモンド社
岡田正大「CSVは企業の競争優位につながるか」『DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー2015年1月号』ダイヤモンド社
中小企業庁「中小企業白書2014年版」2014
名和高司『CSV経営戦略』東洋経済新報社、2015
赤池学、水上武彦『CSV経営』NTT出版、2013
 

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グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた(辻野晃一郎著)

先日、辻野晃一郎『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』新潮社、2010を読みました。

著者の辻野氏は、書名にもあるようにソニーのVAIOデスクトップPCの事業責任者、コネクトカンパニーでのウォークマンのiPod対抗の責任者を経て、グーグルの日本法人代表取締役社長を勤められた方です。

ソニーとグーグルでの経験を踏まえた本書の記述で印象に残ったのは、次の事項です。

「製造業において世界的な大企業を多く生み出した日本は、工場出荷前に製品の品質を出来る限り高める発想と仕組みで圧倒的に世界に先じた。
しかしながら、「瑕疵がない、壊れない、壊れにくい」ことを前提としたモノ作りの体質は、スピードが求められるネット関連製品においては、必ずしも合理的とは言えなくなった。
製品出荷後に問題が起きても、それをネット経由で修復できる場合は、むしろ割り切って出来るだけ早い段階で出荷し、走りながらユーザーの力を利用して製品の完成度を継続的に上げていく方が合理的と言える。」

「人間は、あまりにも忙しすぎると、自分のやっている仕事の本質的な意味を忘れてしまう傾向がある。
目標の達成に向けて忙しければ忙しいほど、能率の追求を優先して、目標それ自体の意味や内容を考えるスタンスが失われていく。
そのため、グーグルでは、勤務時間の2割を本業以外の好きなテーマに使える20%ルールを実施している。」

本書を読むと、新しい技術やビジネスモデルを生み出すための普遍的な経営姿勢や考え方がある一方で、外部環境の変化を先取りして経営を変えていかなければ衰退は避けられないということを感じました。

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