中小企業診断士&ファイナンシャルプランナーのさきがけ読書録

このブログは、中小企業診断士&ファイナンシャルプランナーの就職19年目の仕事人(ビジネスマン)の読書録等です。現在、中小企業診断士、東海地域の某大学院(MBA)、行政書士(試験合格のみ)、AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビジネス実務法務2級、ビジネスマネジャー、初級システムアドミニストレータなどの資格を取得しています。

CSV経営とは

こ数年、経営学の議論で、「CSV(Creating Shared Value)=共通価値(共有価値)の創造」が注目されています。

「CSV」とは、「Creating Shared Value」の略で、「共通価値(共有価値)の創造」と訳されます。

「CSV」とは、営利企業がその本業を通じて社会的問題解決(社会価値)と経済的利益(企業価値)をともに追求し、かつ両者の間に相乗効果を生み出そうという考え方です。

企業の競争戦略を専門とする米国経営学者マイケル・ポーター教授の提唱した「CSV」では、共通価値の概念について、「企業が事業を営む地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら、自らの競争力を高める方針とその実行」と定義しています。

従来、「企業価値と社会価値はある程度相反するものだ」という考え方が主流でした。
企業が利益を追求するためには、多少の社会問題や環境問題を引き起こすのは仕方ないという考え方です。
しかし、近年、いくつかの企業では、「社会問題や環境問題の解決は、利益を生み出す機会である。企業価値と社会価値は両立する。」という考え方のもと、「CSV」の経営フレームワークを活用しているというわけです。

この「CSV」の考え方について、マイケル・ポーター教授は、
「製品と市場を見直す」
「バリューチェーンの生産性を再定義する」
「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」
という三つのアプローチがあるとしています。

(1)「製品と市場を見直す」
  <社会・環境問題を解決する製品・サービスの提供>

このアプローチは、社会的な課題を解決する新しい商品やサービスを生み出すことにより、社会価値と企業価値の両立を図ろうとするものである。
また、このアプローチでは、社会価値と企業価値の両立を実現する必要があるため、純粋に新しい商品・サービスを生み出し社会的な課題に対応するだけでなく、新しい市場を開拓したり、市場を拡大したりすることによって、企業は自らの企業価値を創造する必要がある。

(2)「バリューチェーンの生産性を再定義する」
  <バリューチェーンの競争力強化と社会への貢献の両立>

このアプローチは、自社のバリューチェーンを見直すことにより、社会価値と企業価値の両立を図ろうとするものである。企業のバリューチェーンは、社会に影響を与えているため、この部分を見直すことにより、社会的な課題を解決すると同時に、コスト削減などの企業価値の創造が実現されるとしている。
具体的な見直し項目として、「エネルギーの利用とロジスティックス」、「資源の有効活用」、「調達」、「流通」、「従業員の生産性」、「ロケーション」等を挙げている。

(3)「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」
  <事業展開地域の競争基盤・クラスターの強化と地域への貢献の両立>

このアプローチは、自社が企業価値を高めるため、企業の生産性やイノベーションに影響を与えるクラスターを形成することで、社会的な課題の解決を図ろうとするアプローチである。労働者が搾取されたり、サプライヤーに適正価格が支払われなかったりすると生産性が悪化するため、クラスターの形成には公平かつオープンな市場が必要であるとしている。


また、企業が経営戦略として「CSV」に取り組む意義としては、次の三つが考えられます。

(1)将来を見通した持続可能な戦略を構築できる
  短期思考ではなく、人口動態、気候変動などの社会のメガトレンドに適応する長期的に持続可能な戦略構築が可能となる。
(2)イノベーションの創出
  CSVという新しいフレームを通じて、製品・サービス、バリューチェーン、社会との関わりを見直すことにより、新たな価値、イノベーションの創出が促進される。
(3)グローバル化への対応
  新興国、途上国での事業展開を考えると、「地域とともに発展する」という視点が重要となる。


「CSV」の考え方は、日本の企業戦略と親和性が高いと考えています。

古くは、近江商人の心得をあらわした「三方良し(さんぽうよし)」の考え方と同様と思います。
「売り手良し」、「買い手良し」、「世間良し」の三つの「良し」で、売り手と買い手がともに満足し、さらに、社会貢献もできるのがよい商売であるという考え方です。

また、経済成長の中で発生した公害問題や石油ショックへの対応を通じて技術開発が進み、新興国、途上国での環境ビジネスに応用している事例もあります。


成長のない社会での再分配には限界があると考えます。
中長期的に成長してきた日本企業の経営を改めて見ると、影響力のある社会価値を継続的に生み出すために経済的利益にこだわり、両者の相乗効果を追い求める経営が重要であり、そのような企業を支援していくことが必要なのではないかと考えます。

ただし、社会価値は、何が社会価値なのかの定義が企業で異なり、また、計量化することが難しく、因果関係を明確化することも難しいため、支援すべき企業の抽出、支援した企業の成果の測定が課題と言えます。


【参考文献】
マイケル・ポーター、マーク・クラマー「共通価値の戦略」『DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー2011年6月号』ダイヤモンド社
岡田正大「CSVは企業の競争優位につながるか」『DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー2015年1月号』ダイヤモンド社
中小企業庁「中小企業白書2014年版」2014
名和高司『CSV経営戦略』東洋経済新報社、2015
赤池学、水上武彦『CSV経営』NTT出版、2013
 

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