本書は、多門自動車とい架空の自動車メーカーが、戦後の焼け野原に会社を設立してから、西暦2000年の役員会において、「2002年をめどに、本社をアメリカ合衆国に移す」ことを決定するまでの軌跡を通じて、戦後の日本の自動車産業の成長を描いています。
具体的には、戦後、オート三輪の生産からはじめて、乗用車生産に移っていく過程、ルマン24時間耐久レースへの出場(1960年)と乗用車輸出の開始、マスキー法(アメリカの自動車の排出ガス規制)への対応(1970年)、日米自動車貿易摩擦と対米進出の決断(1980年)などが実際の日本の自動車メーカーであるトヨタ、ホンダの対応とあわせて描かれており、会社の社史や自動車産業の歴史が書かれた書籍よりも熱気が感じられます。
小説の後半の創業者であり主人公の多門大作の追放クーデター(1988年)と1994年の社長復帰、その後の経営回復が、それまでの文章量と比べると非常に薄いのが残念ですが、読み応えのある小説でお薦めです。
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