橘玲『臆病者のための株入門』文春新書、2006
橘玲『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』ダイヤモンド社、2013
を読みました。
『臆病者のための株入門』では、株式市場で富を創造するには、3つの代表的な方法を紹介しています。
1.トレーディング(デイトレードを含む)
誰かが得をすればだれかが損をするゼロサムゲーム。
株式市場はおおむね効率的であるが、わずかな歪みが生じている。
ただし、その歪みは、有能な投資家によってすぐに発見され、消滅してしまう。
確実に儲かる方法をすべての投資家が知っていたならば、論理的に、その方法ではだれも儲けられない。
なぜなら、損をする投資家がどこにもいなくなってしまうから。
株価が日々変動しているという事実は、だれも未来を予知できないという当たり前のことを逆説的に証明している。
2.個別株長期投資(バフェット流投資法)
株式市場はおおむね効率的であるが、わずかな歪みが生じている。
ただし、その歪みは、有能な投資家によってすぐに発見され、消滅してしまう。
市場の歪みを利用し、なおかつ、長期にわたる市場の拡大も援用する。
企業調査に時間と努力が必要。
3.インデックスファンド
資本主義は自己増殖のシステムなので、長期的には市場は拡大し、株価は上昇する。
ただし、それがいつになるかはわからない。
平均以上の運用実績をあげることは原理的に不可能であるが、市場平均を下回ることもない。
そして、それぞれ一長一短があるものの、経済学的にもっとも正しい投資法は、「世界市場全体に投資する」ということは明らかにされていると説明しています。
具体的には、世界市場全体に連動して動くインデックスファンドに投資するということです。
ファイナンス理論によれば、経済成長率が高い国は、みなが争って投資するから、株価も割高となるため、株価は長期的に経済成長率に収斂する。
したがって、世界市場全体に投資すればよい。
また、為替リスクについても、長期的には為替レートは購買力平価に収斂するため、円建てか外貨建てかは問題にならないことも説明されています。
本書では、バートン・マルキール著、井出正介訳『ウォール街のランダム・ウォーカー』でも説明されているように、経済学的にもっとも正しい投資法は、「世界市場全体に連動して動くインデックスファンドに投資する」ということが説明されていますが、「株式市場の歪みを利用する方法」と「長期にわたる市場の拡大を利用する方法」が存在し、それぞれ一長一短があること、資産運用に時間と労力を使うことが難しい素人がどのように考えるべきかについて簡潔にまとめられている書籍だと思いました。
![]() 臆病者のための株入門 [ 橘玲 ] |
『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』では、日本の財政が破たんする三段階に分けた対応方法をまとめています。
具体的には、次のような内容です。
第1段階:国債価格の下落による金利上昇
普通預金…金利が上昇すれば、普通預金の金利も上昇する
第2段階:国債下落、円安と物価上昇のスパイラル
外貨預金、外貨MMF
日本国債ベアファンド…国債の下落にレバレッジをかけて投資。金利が変動しないと長期的には基準価額が減価していくので投資のタイミングに注意が必要。
物価連動国債ファンド…インフレになれば元本が増えて資産の実質価値を保全する
第3段階:日本国が国債のデフォルトを宣告、国家破産
海外銀行の外貨預金
ただし、結論は、意外とシンプルで、
「日本の財政が破たんに向かっているとしても、当分、金融資産は普通預金で持っていればいい」
「日本の財政が破たんしたとしても、手近にある金融商品だけで資産のかなりの部分を守ることができる」
「海外投資をする必要があるとしても、ネット銀行の外貨預金でじゅうぶん」
「金融機関が熱心に勧誘するウマそうな話はすべて無視する」
ということです。
本書を読んで改めて認識したことは、投資の原則は、「リスクとリターンは正比例している」ということです。
「日本の国家破産」は、絶対にないとは言い切れませんが、リスクとリターンを考えて、どのような金融商品がいつ必要で、そのためにどの程度のコストをかけるのかを考えて選択するという当たり前の対応をすべきであるということです。
![]() 日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル [ 橘玲 ] |
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