本書は、著者の前作であり、本ブログでも紹介しました
『臆病者のための株入門』『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』
の内容も取り込み、不動産投資についての記述も追加した書籍です。
本書では、まずお金持ちになるための方法は次の「お金持ちの方程式」から、3つしかないことを説明しています。
「総資産=収入-支出+(資産×運用利回り)」
1.収入を増やす
2.支出を減らす
3.資産を上手に運用する
さらに、資産運用を考える上では、預金金利や株式投資などの金融資本だけでなく、人的資本を含む総資本を考えることが大事であることを説明しています。
1.総資本=人的資本+金融資本
2.金融資本=金融資産+不動産+年金資産+相続資産など
例えば、年金問題を個人的に解決するのであれば、金融資本の運用よりも先に、人的資本の運用を考えるべきというわけです。
日本人の平均寿命に比べて定年という強制解雇が早すぎるわけであるから、労働市場のなかで自分の価値を高め、年齢にかかわらず稼げるようになることが人的資本の運用の視点というわけです。
株式運用については、
1.株式市場は、誰も未来を知ることはできない。
2.株価が20年で10倍以上なるような「黄金時代」は(おそらく)終わってしまった。
3.個人投資家は株式市場の中でもっともリスク耐性が低い。
という前提をもとに、
「株式市場の暴落を待って、株価が回復するまでドルコスト平均法で世界市場全体に連動して動くインデックスファンドに分散投資する」
ということです。
また、為替リスクについては、前著の『臆病者のための株入門』でも説明されていたように、
長期的には為替レートは購買力平価に収斂する(インフレなら通貨は下落する、デフレなら通貨は上昇する、よって、市場の裁定によって為替レートがモノの値段を同じにする、名目レートに比べて実質レートは大きく変動しない)、
長期的には実質金利は同じになる(金利の高い通貨は下落する、金利の低い通貨は上昇する)、
ことから円建てか外貨建てかは問題にならないと説明されています。
さらに、不動産については、賃貸と所有でどちらが得かということは結果論であり、市場経済では絶対に得をするということはありえないことについても説明されています。
簡単に説明することは難しいため、本書をお読みいただければと思いますが、例えば、不動産(マイホーム)を所有するための資金を株式などの運用に回して配当を受け取る場合と比較すると、配当額が大きければ賃料が実質的に無料になる場合もあり得るというわけです。
要するに、不動産投資と株式投資のどちらが儲かるかという話なのであり、地価が上昇を続ける場合は借金をして不動産投資をした方が株式投資よりも儲かったという話であることを説明しています。
さらに、不動産については、市場の構造から、一次情報の周囲にいる投資家と比較して、素人が不動産の「掘り出し物」の物件を見つけることは不可能である「情報の非対称性」の弊害が大きい市場であることも説明しています。
本書を読んで感じたことは、投資の原則は、やはり「リスクとリターンは正比例している」ということです。
有利な投資機会は、自分のところに来る前に投資のプロが持っていってしまっているのが当然という意識で、自分に理解できない投資はしない、ゆっくり時間をかけて検討してリスクとリターンを理解してから意思決定することが重要だということです。
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